Fighter girls 2

900年生きていると噂の小説家の少女、ミネルヴァ・クルシェの手紙。


親愛なる友人へ

今、私はデュルエーナの国から南へ向かっています。メルべに会いに行くの。あの人、最近、山の中の湖畔にアトリエにする別荘を手に入れたんですって。

メルべの絵は、いつも私に新しい世界のインスピレーションをくれるわ。メルべの描いた、「水の中の祭」の絵を見て、私が新作を仕上げたことは私達だけの秘密よ?


親愛なる友人へ

湖畔の反対側から、メルべの別荘を見つけた時、彼女が描いたのはこの景色だって分かったわ。暗い森の中にアトリエの仄かな火が灯ってて、それが揺れた水面に幾重にも映ってるの。

でも、その事は内緒にしておいたわ。私達の仕事は、夢を膨らせることですもの。たくさんの夢の種をまいて、世界中にはまだまだ神秘が隠されてるんだってことを残して行くの。

いつも通り、メルべは、私が小人症だと思って、色々手を焼いてくれるわ。あの人、絵描きなのにすごくおせっかいなの。

ランストン産のミルク羊の乳のチーズが、骨の発達に良いとか何とか言って、私が遊び行く連絡をしてから、チーズ倉庫にミルク羊のチーズを棚に2段分も用意しててくれたんですもの。

メルベの唯一の趣味が、チーズ集めだものね。

あの人、もし絵が描けなくなったら、間違いなくチーズの卸売りの仕事を始めるわ。


親愛なる友人へ

今、メルベの別荘の客間で、この手紙を書いています。

私も、だいぶ足が弱くなったから、今回の旅では、ガイドを雇ったの。そのガイドさんは、いつもは用心棒をしているらしいわ。

その人から、学生時代の話を聞いて、私すごく筆の進むお話を思いついちゃった。

修業中の魔女の女の人が主人公で、世界中の秘境を飛び回る冒険のお話。

魔物を退治したり、魔法薬を作ったり、精霊とお話ししたり、色んな不思議なことが、当たり前みたいに起こる世界なの。

私は魔力を受け継がなかったから、本当の魔術がどんなものかは想像するしかないけど、今まで色んな世界を見てきたのも無駄じゃなかったんだって思える作品にする。

寿命だけが長いって、案外無駄じゃないわ。


親愛なる友人へ

メルベに用心棒さんを紹介したら、メルベが用心棒さんに「クルシェと一緒にデッサンのモデルになってくれない?」って言い出して、相当お金を積んでたわ。

用心棒さんは乗り気じゃなかったみたいだけど、メルベは、どうやら私を抱え上げてる用心棒さんを描きたかったみたいなの。

私が16kgしかないって言っても、デッサンをする間、歩きもせずにずーっと私を抱えてるのは、用心棒さんも大変だったみたい。

でも、出来上がったデッサンの素晴らしいことと言ったら! まるで、着飾った幼女を肩に担いでる美しい女戦士っていう雰囲気だったの。

外から見たら、こんな風に写ってたのかって思って、びっくりしたわ。今まで行く先々でじろじろ見られてたのは、私が有名なせいでも、用心棒さんが褐色の肌をしてるからでもなかったみたい。

用心棒さんから聞いた言葉だけど、「種族差別なんて下らない」って本当ね。

ああ、書くのを忘れてたけど、用心棒さんは、おばあさまが吸血鬼なんですって。

それだけ近親に闇の血を引く人が居るなんて、なんて素敵な事かしら。


親愛なる友人へ

デッサンを終えた後、メルベが「食糧庫にある好きなものを好きなだけ食べてても良いし、ガイドさんの日当も払うから、是非絵が出来上がるまで滞在して」って言い出して、私達すっかりモデルさんよ。

私は、用心棒さんの肩に座りながら、夜に成ったら書く小説の構想を練ってられるけど、ずーっと私を右肩に乗せて、ポーズを決めてなきゃならない用心棒さんは、昨日から肩凝りに悩まされてるわ。

これは、メルベからこってり搾り取ってやらなくっちゃ。


親愛なる友人へ

ようやくメルベの創作熱から解放されて、私達は東へ向かってるわ。ルビーロードを走ってる列車があるから、それに乗って、用心棒さんの姓の発祥のはずの、古都「ローラン」の遺跡を観に行くの。

「あの辺りは砂と岩しかないよ」って用心棒さんは言ってるけど、「それが良いのよ」って言っておいたわ。

ルビーロードを走る列車は、砂漠を突っ切る間、途中で何回か燃料を補給するから、「ローラン」の近くの休憩所から往復できる切符を買っておいた。

必要なのは、水と適度な塩分。レモン水に少し塩を入れて持って来たわ。そろそろ、「ローラン」の近くに着くみたい。さて、私も研究しなくっちゃ。


親愛なる友人へ

久しぶりの手紙になるわね。私と用心棒さんは、無事に「ローラン」をじっくり見物して、今屋敷に帰って来たわ。

「ローラン」は、一度砂に埋まったのと、発掘された後、砂嵐にさらされたせいで、すっかり建物の彫刻も削れちゃってたけど、その場所に確かに住んでいた古代の人々の気配まで分かりそうだった。

旅の間に構想を整えてた小説を、執筆し始めるとしましょう。

用心棒さんには、しっかり謝礼を払って、連絡先を聞いておいた。また次に旅に出る時も、彼女にガイドをお願いするためにね。

小説の主人公の名前が知りたい? それは、出来てからのお楽しみよ。