Fighter girls 5

時間を止められるなら、自分が一番最高だって思ってる時。

私はそう思ってた。生きてる間、私をイライラさせ続けた、エドナが死ぬまでは。

エドナは、自分が恋した相手に、自分の音楽を聴いてもらってる、その時に死のうって選んでたんだ。だから、肺を患ってるのに祭に参加したのよ。

でも、実際、エドナが倒れて、息をしてないって気づいたとき、私は「リッドを呼んできて!」って叫んじゃった。

私は、瞬間的に「リッドなら、エドナを助けられる」って思っちゃったの。

リッドはほんの少しだけ、エドナに生きる余力をくれた。「肺と心臓が動く分だけもらったよ」って言ってたから、たぶんエドナから「死」の要因を少し取り除いてくれたんだ。

エドナは、泣いてた。

私は、その時、病が苦しいのかと思ったけど、後で気づいたの。

自分で選んだ死に方が出来なかったうえに、恋した人に「病を抱えても、まだ生きろ」って言われたようなものだったんだって。

エドナは、リッドがくれた僅かの時間を、精一杯生きたみたい。

エドナの恋の相手がなんで分かったかって? エドナの主である、魔術師が、「『R』で始まる名前の者を知らないかい?」って、山の者に尋ねてたからよ。

私は「リッドのことだ」って分かったけど、「知らない」って言っておいた。


リッドは軽い奴だけど、女性に対してはすごく紳士的なの。でも、リッドはエドナにだけは素っ気なかった。

だって、リッドには500年以上前から付き合ってる、お気に入りの魔女のパートナーが居て、一緒に、小さかったあんたの奥さんを育ててた仲なんだもん。

リッドが気安く「エドナ」って、本人に向けて読んだのは一回きり。エドナはその一回の呼び声だけで、リッドに一目惚れしちゃったわけよ。

それが分かるまで、私はあの恋煩いみたいな音色を、誰に向けて奏でてるのか分かんなくって、ずーっとイライラし続けてたの。

恋した相手が悪かったんだってことは、さっきも言った通り、彼女が亡くなってから分かった。

リッドだって、たぶんエドナが自分に恋心を抱いてるって分かってた。だから、あえて期待を持たせることはしなかったのよ。

あんたも結婚したんだから、義理の父親とは言え、そう言う所は見習いなさい。

でも、私からこの話を聞いたなんて、リッドに言っちゃだめよ? 死んだ者の叶わなかったコイバナなんて、無粋も良い所なんだから。


私がララって呼ばれてる理由? そんなの分かんない。私はこの山で生まれて、この山で育った。その間に、いつの間にかララって呼ばれてた。

笛を吹く技術を身に着けてから、昔は祭だけじゃなくて、何処でもかしこでも演奏してた。

色んな種族の者と共演したわ。リザードマンのドラムアーティストとか、ドワーフのホルン吹きとか、チューリップの妖精のハープ弾きとか、最近では、あなたの旦那様とかね。

良い? あの子は、特別天然記念物みたいなものよ。あなたは、あの天然記念物を、保護しなきゃならないの。年上としてね。

天然記念物ってものは、大体の場合、ちゃんと隔離された自然の中で、丁寧に丹念に守られないと、生きていけないの。

あなたの旦那様は、鬼火に育てられたって言っても、ある程度の知性がある人間だから、外の世界で暮らすようになったら大混乱しないとも限らないわ。

この山の中で育まれてた「常識」と、外の世界の「常識」は、全然違うでしょ? ニンフの私が分かるくらいの違いなんだから、人間にはショックも大きいわ。

あなたの旦那様は、「隔離されたお城の外が知りたいお姫様」みたいなもんなのよ。ナイフ振り回すお姫様が居るかって言ったら謎だけど、精神的な話としてはそんなものよ。

それに、あの子、心の声が聞こえるでしょ? 人間の言葉を覚えてからは、その術もあんまり使わなくなって来たけど、今でも気配くらいは分かると思う。

あなたの柄じゃないだろうから、そんなに心配はしてないけど、浮気なんかしたら、即バレるってことを覚悟しておいたほうが良いわ。

そんなに極端な話じゃなくても、嘘とか隠し事なんかも、気配くらいは分かると思うから、上手くミスリードしてあげて。

この世の中には、知らなくても良い事なんて山ほどあるんだから。


結婚? 私が? 人間とは種族が違うから、あんまりそう言う慣例にはこだわらないかな。好きになったら好きって言うし、嫌いになったら嫌いって言う。

ピューターのこと? ああ、テイルから聞いたの? うん、ピューターのことは…大っっっ嫌い。私が消滅するまで呪ってやるって決めてる。

だって、私はピューターが殺される瞬間も見てるし、その時、隠れてるだけでなんにもできなかった自分に腹を立てて泣いてたことだってあった。

だけど、よく考えてみたら、女にそんな思いさせる男なんて、最低じゃない?

テイルが、ピューターはいつでも私といるって言ってたけど、そんな最低男にいつまでもこだわられてても、全然嬉しくない。

この笛? うん、ピューターのよ。勘違いしないで。私が持ってないタイプのフルートだから、コレクションとして持っててあげてるだけ。

私、これから、楽器コレクターに成ろうかなって思ってるの。このフルートは、その第一号って事かしら。

繰り返し言うけど、ピューターのことは大っっっ嫌いだから。


あー。頭痛い。お酒ってこれがやーよねぇ。