私は何も悪くないのに、人々は私が悪いと言うのです。
おばあさまが遺してくれたレインブーツ。
水の上を歩けるレインブーツ。
私はそれを履いて、奇跡のお話みたいに船を助けに行ったんです。
だけど、船を助けた私に向けられたのは敵意でした。
「お前は我々の船を沈めて、我々を助けたふりをして利益を得ようとした魔女だろう」って。
何処に頭がついていれば、そんなややこしい考えが出てくるか分からないけど、私はそのせいで追われています。
私は敵が迫った時、レインブーツを履いて川の上を走って逃げました。
「見ろ! 水に沈まないぞ! あいつはやっぱり魔女だ!」
誰かが叫びました。
聖人が水の上を歩けば神の力で、唯の女の子が水の上を歩けば悪魔の力なんですって。
なんて無茶苦茶な理論でしょう。
私は追手を振り切り、家にあったお金をありったけ持って、町で保存食とワインを買いました。
これから、海を歩いて海峡の向こうの島国に行ってしまおうと思っています。
あの国の田舎には、まだ魔法の文化が残ってるはずだから、大丈夫。
割れた海を渡って逃げたモーゼのように、私はこの海を歩き切るんだ。
そう願いをかけて、私はコンパスを片手に歩きだしました。