107 「水」

流れは冷たさを残して

はじけば空に舞う宝石のように

泳ぐことのできるこの空の底

大気の透き通る季節を待つ

凍えることを知りながら


静かな銀色の雪原に

横たわり見上げる結晶は

沈み込んでくる羽のよう

埋もれてしまえば命を失う

けれども埋もれて居たかった

真っ白に混ざってしまえば

記憶の痣も消えるだろう

そんな風に思ってもいなかったけど


唯 混ざっていたかった


今や清らかな流れは触れてはならず

踏み込むべきではない隔離された世界

懐かしむように枝葉を広げる

温度を持たぬ命に