109 「Evil」

物語を共有することで一種の安心を得るのだと

何処かの学者の書いた本に載っていた

たぶんそれはひどく単純で確かなことだろう

それが信仰と言うものの発端なのだ


迫害されたと嘆くものは さらなる犠牲を求める

知識あるものを恐れ 少なきものを挫き

信義に背くことすら 正義と呼ぶだろう

羊を名乗りながら 肉を焼くことを喜ぶ


それらも全て童話の一節

通り過ぎた過去なのだと

言いながら何故 悪意は姿を消さないのだろう

世界は完璧では無い

完璧な存在が創り出したと言われているのに

彼等が存在する前からリリス達は楽園にいた

悪意は常に先に住んで居る

ならば必要なのは 悪意に殺されぬための力


連鎖を生む殺意の雨が

止む日は来るのだろうか