115 「Sahara」

朧月夜に透き通った歌声を

知らない言葉を知らないままに

知らない音色と知らない色彩は

火の粉を散らす焚火を囲んで

子供たちに伝えられてゆく


誰も歌わない世界なんて

中身のない缶詰と同じで


誰も奏でない世界なんて

枯れ果てた井戸を見つめるようで


壁に描いた絵が何のために描かれたなんて

推測だけで良いじゃないか

そこに描いた人が居たってだけの意味で

十分だと思うんだけどな


歌った声を形に出来るなら

空気の中に結晶にして

保存しておいただろう

1万5千年前の人達もさ