014 「慈雨」

幾何学的な模様が脳内に埋める

墓標の無い墓には草花が咲くでしょう

満ち月の夜に 白銀の光を浴び

こぼれる涙は慈雨となって

漆喰の街に降り注ぐんだ

見えなくなって 聞こえなくなって

話せなくなって 記せなくなって

届かなくなっても

許されるのは歩を止める時


空を支配するのは満ちては欠けるもの

焼きつけるあの星すら姿を隠す時があるの


風にゆらぐ枝葉を照らして

こぼれる光を両の手に映す

細胞達の声が聞こえる

脈打つことを諦めないって


幾何学的な模様で脳内を埋めて

全部に嘘を吐いて 全部を裏切るの

世界の美しさすら知らず

目を伏せているのなら


全ては変わり 全ては無くなり

全ては灰に 全ては泡沫に

用意された檻の中の幻を

白銀の光で洗い流して


雨の降る 漆喰の街を観ているの


その空に虹がかかる瞬間を