140 「宙」

月影が照らす真っ暗なアスファルト

夜に生まれた僕の影は

闇に呑まれることもなく其処にあって

手を透かすほどもない光でさえ

輪郭を描く 鮮明に


波打ち際 湖畔で君の遺体を見つけたら

ガーゼでくるんであげる

魚に食べられないように


小さなあの子が待っているのに

君はもう「ただいま」って言えない

小さなあの子が待っているのに

君はもう「おやすみ」って言ったまま


君はいつも終わりの事ばかり気にして

最後の挨拶を間違えたっきりだ

大地に海に宙に還る時が来たら

「またね」って言って手を振るんだ

怖くなんかない寂しくなんかない

其処にはこの星の創り続けた

命達が待っている