157 「黒曜」

低く飛んでいた 秋に羽化した蝶々

命いくばくもなく 出会うものにも巡り合えず

秋の花を伝いながら 小さく舞っているんだ

やがて尽き果てる 歳月の中で


手の中に閉ざした蛍 今は飛んで行け

澄んだ水の無いところに お前たちの居場所はない


潤す水の無いところに 彼等は生きていて

だけど 悲しいだけじゃないのを 僕は知っていて

強くあろうとする 命の閃きが この星で輝いている

瞳しか見えない花嫁 その目に彼は心を寄せたんだ


あの日に放った蛍は ほうき星になって還ってきて

一輪空に咲いたような 真っ青な光を輝かせていた


あなたの受け継いだ 黒曜のような宙の中で