016 「サイレント」

満ち月に招かれて 海は光を得る

天が砕けて行く 降り注ぐ氷と化して

波が呑みこむものは 砂か時か僕か

祈りを込めるなら 最期が苦しくないことくらい

誰に不幸と言われても

僕は世界が変わって行く事を知っている

泣いている暇があるのは たぶん幸せな事かもしれない

    

僕は眺めるだけ この景色 この時間 この空間

時の音すら目に映る 全ては瞬時に描きかえられている

断続の連続でしかないんだよ

空の絵を描きたかった だけど雲は一瞬も

止まってはくれないから

僕は眺めるだけ 脳裏に 記憶に 瞼に

焼きつけるように ずっと