026 「切り裂きジャックは笑ってたんだ」

月はだいぶ薄暗くて

ガス灯の下 走る馬車の影

ワイン色の夜は ずいぶん深い海の底


真っ赤な花を散らして

ジャック・ザ・リッパーは笑ってたんだ

祝福するように穏やかに


喉笛と一緒に

切り裂かれた断末魔

神の名を呼ぶ暇も無く

血液が気道をふさぐ


悲鳴になるはずだった

血の泡ははじけて

散り散りばらばら

ワイン色の夜は ずいぶん深い空の底

真っ赤な花が静かに散った

ジャック・ザ・リッパーは笑ってたんだ

祝福するように穏やかに

一滴頬に赤い涙浮かべ


月の薄暗い夜だった