027 「歌えない樹」

街の中に隔離されました

人は僕を街路樹と呼びます

ずいぶん根をはるのに苦労しています

ちょっと出っ張ると踏みつけられます

養分はたりないくらいだけど

手をのばしすぎると腕ごと切り取られます

冬にはおめかしをしてもらいます

だけどいぼいぼの電飾は

昼間はあんまり綺麗じゃありません

やっぱりなんにも邪魔するもののない

風の涼しくなる季節が好きです

遠くであの子の歌った声が

風に乗って僕の所まで届くんです

僕も応えて歌うんです

こんな素晴らしい季節には

僕の足元にも草花が咲きます

その子も小さく歌うんです

晴れわたった空に 雲が流れてきたら

みんなで雨が降るのを待ちます

歌い続けた僕達は 喉が乾いて仕方ないのです

空から熱が冷める頃に

草花は「さよなら」って言いました

僕は一枚手を散らし「さよなら」って言いました

そうしたら 季節は眠りに向かうのです

手を無くした僕達にまた電飾が巻かれます

やっぱり少し窮屈で ほんの少し退屈です

あの… 眠っても良いですか?