003 「月下」

透き通った光を呼んで

水晶なような思いを水辺に沈めた

   

輪唱する木々のざわめきが

南から吹く風を告げる

もうずいぶん離れてしまった

季節はやがてまた訪れ

泣き出しそうな冷徹さで戒めを与えるだろう

水晶のような旋律を思い出す

凍てつく空気を肺に満たして

そっと呟いた日


決めつけられた言の葉を

殺めてなんと綴ろうか

誰かが込めた秘密など

要らない欺瞞を掻き消して

決めつけられた言の葉を

殺めてなんと歌おうか

君へと伝う言葉すら

途切れて消える月の下


透き通った光を呼んで

水晶のような思いを水辺に沈めた

輪唱する木立のざわめきよ

掻き消してくれ 要らないもの

もうずいぶん離れてしまった

月光はやがてまた訪れ

浮遊するような闇に影を描くだろう

 

水晶のような旋律を思い出す

溶けない氷を肺に満たして

そっと呟いた