032 「海底散歩」

鉄道が走り出した

魚達の泳ぐ空を眺めに

ほんの少しの旅に出よう

水中を走る列車の窓には

珊瑚の庭が続いている


ふわり羽のような吐息が舞った

バブルリングで遊ぶシロイルカみたいに

器用に息は吐けないけど

窒息する事も無い


そして不思議と苦しみのない

水底をふらふら歩く

    

着飾った熱帯魚が

群れを成して隠れている

コーラルの赤は優しい夕暮れの色

太陽はずいぶん高い水面で輝く


サラサラ揺れる光と波は

砂を踏む僕の足跡を消し去る


何処から歩いて来たかなんて

そんなに大したことじゃなくて

これから歩いて行くその先にも

こんな穏やかな光と波が

照らし続ける事を

ほんの少し願ってみる