060 「泡」

プカリ プカリ プカリ コポ


離れてゆく離れてゆく 日の光が西に沈み込む

喉の奥から 肺の奥から 吐き切った声が

揺れて浮いて舞って 離れてゆく

意識はゆっくりと離れてゆく


プカリ プカリ プカリ コポ


離れてゆく離れてゆく 望月の銀色が東に浮かぶ

歌っているのは波の中の命達

揺れて浮いて舞って 泳ぐように沈んでゆく

なんて静かな 静かな夜で



鎖は両手に絡みつき 熱のない世界へと私を誘う

耳障りな泡の音 もう届かない水面へ

水の中に砕けてしまう 歌は 声は 息は 泡は

望みを絶たれるより 希薄な望みが あるほうが残酷だと



凍る海に唱えていた



例え話なんて存在しない 現実と私を包む暗闇へ

沈んでゆく 離れてゆく 沈んでゆく 遠く遠く

水に満ちた肺が 騒ぐのをやめた


プカリ プカリ プカリ コポ