064 「物語」

風を纏う白き花びらを降り注ぎ

雲は流れて 太陽を経て 大地に海に還って


月を追う木霊達が輪唱する 古の森の物語

漠然とした流れと 確立された生命の鼓動


鳴き交わす鳥たちの眠りを妨げた悪夢は

夕焼けの中に溶けて消え行く


蒼き涙をこぼす 静寂の星々に

よく似た目をしているステンドグラスの聖女


ランプを片手に墓標の並ぶ庭を歩く

アンダーテイカーの呟く言葉


墓標は要らぬと言われた墓は 何処の樹の下に埋めましょうか

赤い花の咲くあの老木か 春に芽吹くあのブロッサムにか

それとも枝葉を落さぬ 常緑の生命の樹か


ゆらりとランプ灯り揺れる 森の奥は深い闇の中

ひらりと肩にとまったのは 導を見失ったパビリオ


何処へと行くのかお嬢さん この先は死者の眠る森

花が咲くのはまだしばらくだ


そうなのこの先は私の眠る森 どうか探し出して

弔いの言葉もなく 埋められた私を


君の亡骸がこの森にあるなら

いずれは見つかるだろう 私が全ての墓を忘れぬ限り


肩のパビリオ 真白なドレスの乙女に変わり

アンダーテイカーの左目に口づけた


あなたに闇を見透かす眼をあげる これは契約

裏切れば光を失う


飛び立ったパビリオ 真白な羽を揺らめかせ

金色の月光射す木立の間に消えてった