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月々徒然

春めくけれど

桜は咲いているのだろうか…。まだかなぁ。まだかなぁ。もう咲いてるのかなぁ…。

この季節を楽しみにしているので、毎年キンキンに冷える冬場も苦も無く過ごせるのであって、「もう咲いてました(過去形)」になったらショックである。

とある猫の話をしよう。彼は、北海道のある住宅で、御主人と共に住んでいた。

御主人はとても彼を愛でてくれて、何不自由なく暮らしていた。

ある時、御主人は彼をキャリーバッグに入れて、飛行機に乗って本州に向かった。

どうやら、彼の御主人は本州で育ち、大人になってから北海道に来たらしいのだ。

病院に行くより長い旅だったが、御主人の故郷と言うので、きっととても素晴らしい所に行くに違いないと彼は信じていた。

御主人の故郷の家は静かな田舎町にあり、家でようやくキャリーバッグから出してもらえた彼は、ようやくのんびりとのびをした。

自由に家の中を散策しても良いようだったので、彼は「入っちゃダメ」と言われた部屋以外は、あちこち好きに歩いて回った。

季節はどうやら夏と言うものらしく、北海道より蒸し暑かったが、窓が開いていたので、彼は風にあたろうと思って窓辺に向かった。

窓から見える景色がいつもと違うのも、なんだか良い気分だった。いつも見ている窓辺も面白かったが、めったに見られない映画を見ているような気分だった。

これが御主人の育った家か、と、彼が非常に満足していると、突然背後から知らない老婆の怒鳴り声がした。

「窓が開いてる!! 猫が逃げる!! 猫が!!」

訛りが強く、何を言っているのかも分からなかったが、この声に驚いた彼は、とっさに窓から飛び出した。

後ろから老婆が追いかけてくるのが分かり、怖くなった彼はやみくもに町の中を逃げ出した。

走って走って、走り疲れた頃には、彼は自分が何処から来たのかも分からなくなっていた。

迷子になってしまった。どうしよう。

絶望感が彼を襲った。御主人は見つけてくれるだろうか。でも、どこもかしこも見た事の無いものだらけだ。

辺りは、知らない猫や犬の匂いがする。とてもじゃないが、一ヶ所にじっとしていられる心地ではない。

彼は、とぼとぼと歩いた。恐らく、御主人とはもう会えないのだろう、と彼は思った。北海道の涼しい風を思い出しながら、彼は野良猫としての道を歩いた。

何年が過ぎただろう。彼は、野良猫としてはもうだいぶ年を取っていた。夏になるといつも思い出すのは、北海道の懐かしい家だった。

ある日、何日もご飯を食べれない時があった。手足の動きが鈍く、鳥も狩れなければ、カエルすら捕まえられなかった。

ついに彼は、空腹に倒れた。衰弱が激しく、蒸し暑さの中で意識が朦朧としてゆくのが分かった。

ふわりと体が浮いた気がした。そのまま、フワフワと何処かへ運ばれてゆく。

きっと御主人が見つけてくれたのだ、と、彼は最期の夢を見た。

彼は今、アルタイルで、御主人が来るのを待っている。

…と言う、半猫伝的な、とある猫の話であった。ずいぶん昔に聞いた伝聞的な実話をベースにお送りいたした。

待ってると思うんだよね。もし、誰かに拾われて飼い猫として余生を過ごしたとしても、今はたぶんアルタイルに居る頃だと思う。

日記じゃねーじゃんって言う話だけどね。

写真は、相変わらず玄関に飾っているオブジェ。

丸い瓶の中に猫目石加工の青いビーズとガラス製の王冠を入れて、別のオブジェに使ってるパール加工のビーズネックレスを組み合わせてみた。

俺は桜を待っている。まだか。