随筆 メロンシロップ
所謂、かき氷を緑色にして甘く味をつけるあやつのことである。
某氏によれば、カキ氷を赤くする「苺味」、かき氷を黄色にする「レモン味」、そして、かき氷を緑に色にする「メロン味」は、
「全部同じ味」らしい。
だが、これは味の問題ではなく、気分の問題である。カラフルなかき氷、合成着色料100%。その鮮やかさが生み出す、「夏の気分」。それが醍醐味なのだ。
我家では、今その緑色の甘いあやつに、炭酸水を加えて「メロンソーダ」にして飲むのが流行って…いた。
パウチを買った時は良かったのだ。いとも簡単に、あやつはグラスの中に注がれ、炭酸水で割られてメロンソーダに生まれ変わった。
決して、「メロンの味はしない」と思ってはいけない。これはイマジネーションの問題だ。イマジンだ。
「イマジン」=「イメージしてご覧」=「思い浮かべてごらん」。そう呼び掛けてみよう。
緑色、甘い、それはかつて高級フルーツとして名をはせた、メロンだ。そして、炭酸で割られて、丁度良い甘さになった、これはもう、「メロン」の「ソーダ」だ。
と念じながら、夏の一時を過ごせばいいのだ。
一杯のメロンソーダ。そこには夏の憩いが訪れ、全ての苦難を忘れさせてくれる。
ある日、我は瓶入りのメロンシロップを買った。パウチを買うより、量的にもお買い得だと思ったのだ。
冷蔵庫で冷やしておいて、炭酸水も用意して、さぁ、メロンソーダを作ろう! となった時だった。
プラスチックのキャップは、既に解放され、中に銀色のものが見えている。
そうか、銀紙でキャップがされているんだ、と思い、それを「剥がそう」と、プラスチックのキャップを外した。
その銀色の物が、「王冠」であることを知って、調理台の前で頽れそうになった。
何故なら…我家には、栓抜きが無いから…!
こんなことなら、こんなことなら…パウチを買えば良かった! 栓抜きよ…君は一体いくらするんだ?!
そんな思いと共に、メロンシロップは冷蔵庫で眠っている。
栓抜きと出逢う、その日まで。
後日、栓抜きを買ってメロンシロップは無事にソーダになりました。てこの原理ってすごい。