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時々徒然

週間連載中

外部サイトに展示しているシリーズ小説の、「Ⅰ」の終り二節が昨日アップ出来た。

割と、描写してる情報だけだとキュアは苦労人で、クロウだけ良い目を見ているように思うかも知れないけど、書かれていない10年間の間では、キュアは教師と環境と理解者に恵まれて、

クロウは家に閉じ込められ、いつ母親に殺されるか分からない状況でずっと神経すり減らしていたって言う前提があるのです。

だから、クロウは自分が女の子に「好き」って言われても、その気持ちにどう応えれば良いのか分からなくて、「Half Devils」編の終わりのほうではパニックになって泣き出したり、

「好き」って言う気持ちが「一瞬のものなのではないか」って疑いを持ってたり、「Falling to Eden」編のほうでも、自分の心臓がどきどきすることは受け入れてるけど、

「愛情」を表現する方法をほとんど知らないんです。

クロウを気に入って、彼に「好き好き攻撃」をしてくるララって言うニンフの女の子が居るんですけど、彼女はすごく大人なので、クロウのそう言う不器用な所を察していて、

愛情を込めてクロウを「ようちえんじ」と呼びます。クロウのほうも、少ない知識で「恋」について考えたり、ララから受けた「愛情表現」をララに返そうとするんだけど、今ひとつぶきっちょ。

ララは軽い女っぽい印象ありますけど、彼女は彼女で、「愛情って言うものを知らずに育った少年」に、「心の内から湧いてくるときめきと言うもの」を教えてあげたいと思ってるんですよ。

だから、魔力を使えば簡単にクロウの意識を自分の都合の良いほうに持って行けるはずなのに、そうしないんです。魔力で心を奪っても、それは本当の心じゃないから。

彼女は、クロウが心の中に抱えている「自分の存在への違和感」や、彼が「愛情欠乏状態」であることを分かっているんですよ。

クロウ本人は、昔からマイペースでな性格だったので、表面上は「普通の良い子」として育って来たんですけど、自分に対して殺意を持っている人間と「家」の中でほとんど二人ぼっちって言う、

子供としたらものすごく緊張した状態で育って、しかもその自分に殺意を持ってる人物(母親)を、父親から「大事にしろ」とか、「助けてあげなさい」とか言って育てられたんですよ?

もし、父親に母親の狂気の事を話しても、「ママは病気なんだから、仕方ないんだ」で済ませられたんでしょうね。ものすごく歪んだ家庭環境で育ったと。

クロウとキュアの母親である「ソフィー・ヴィア」は、もちろん子供達や夫に対して「愛情」は持っていません。何故なら、ソフィーにとっては、あの3人は「悪魔」だから。

彼女が幸せそうに買い物が出来るようになった理由は、「子供達は呪術師の手によって殺されるんだ」って言う安心を得たからなんですよ。

背景を語ると、ソフィーは闇の血を引く子を身ごもってから「神に背いた罪」に苛まれていて、だけど敬虔であるが故に堕胎が出来ず、それで子供が産まれるって言う時にパニックになってたんです。

彼女にとっては、「闇の者」は、それこそ邪悪なる者で、欲望のままに血をすする悪魔、神の敵、全人類の敵、って言うすごく古典的な考え方があるんです。

そんなことを言ったら、人間だって欲望のままに動物を増やして食い殺してるんですけど、ソフィーの考え方だと、「増やされる動物は、人間が食べるために神様が作った生き物」ってなるんです。

つまり、ソフィー・ヴィアって言う人物は、「人間至上主義」なんですよ。人間は神様の創造物で、人間は何も間違えてない。この世界は人間のために作られているって言う考え方の人。

だから、その人間を脅かす者は「悪魔」であり、抹殺しなければならない、って言う考え方の持ち主。

僕の書く世界の中では、「嫌な奴」にあたると思うんですけど、普通の世界では、そう言う人もちゃんと一般市民として生きてるんですよ。

ソフィーが特殊なのではなく、僕の書く世界が特殊であるが故に、ソフィーが「危険人物」に見えているんです。

夫と子供を殺す人って言うと殺人鬼に成っちゃいますけど、悪魔を成敗する人って言ったら、正義の味方に聞こえるって言う事です。

ソフィーは愛情の無い妻ですが、夫であるパンパネラ「エリオット・ヘンゼル」の餌食なる人からしたら「救世主」なのかもしれないし。

ですが、ソフィーは正義の味方ではなく、愛情の無い妻であり母親であり、キュアとクロウ…特に、クロウにとったら「無意味に自分を殺そうとしてくる理解できない存在」なんですよね。

そんな事情があるからこそ、クロウにとって「誰かを好きになる」って言うのは、すごく苦しくて不可解なことなんです。だからこそ、彼には「恋人」を作ってほしかった。

キュアの内面については、またいつか語ります。