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時々徒然

キュンな話ではない

先の記事から続きまして、「Scar of The moon」の主人公、ルリとグリムの話です。何故ルリと生前のグリムが「不思議な夢」の中で出会ったのかは、物語の中で既に示唆されています。

はっきりとは記述していませんが、こう言う流れがあったんだろうなって言うのは分かるようにしてあります。

あの物語は、サイドストーリーが無ければすごく単純な話で、ある術師が「危険性を持つ霊体を保護して、危険のない精霊として育てる」と言う目的を持っていたのですが、その仕事は自分達だけでは完結出来ないだろうと察して、仕事を継いでくれる次の世代を探していたんです。その時に次の世代として見出された少女が、いずれ精霊となる霊体を守りながら成長して行くって言う話です。

「Scar of The moon」の中に記されているのは、大体1年間くらいの話で、主人公の少女は1歳だけ年を取ります。

主人公の少女ルリは、それまで夢の中で学んできた「夢だと思っている力を実際に操る方法」をどんどん習得して、保護しなければならない霊体グリムと一緒に逃亡するときは、随分一人前に術が使えるようになっています。

それまでのシリーズだったら、「術」を使う時は、術の名前がたくさん出て来ていたんですけど、ルリは術の名前を知らないので、物語の中で登場する術も正式名称を省いていることがあります。

エスタからグリムが聞いいてて、グリムが知っていた僅かの術を覗くと、ルリは「反呪」だの「転移」だの「捕縛」だのの術の名前を知らないんです。

結界と言うものがどんなのかは言葉の意味から分かるし、「追跡」については、グリムが知っていたんですね。以前、エスタと一緒にシャーマンを追い払った時に聞いて覚えていたんでしょう。

そんなわけで、以前のシリーズだったら「転移」と呼んでいた、噛み砕いて言うと瞬間移動の力も、「跳ぶ」と表現しています。

意識が飛ぶとかの危険な意味ではなく、ジャンプする、今いる位置から、思っている位置に「跳ぶ」と言う意味でルリ達はこの言葉を使っています。

そして、4話の第二節「大逃亡」の回で、ようやくルリの容姿が少し描写されました。緩いウェーブのかかった長い黒髪、と言う所ですね。今までルリの容姿は「褐色の肌と長い黒い髪と黒い瞳」としか表現されてなかったので、髪質がどうなのとか、美しいのか野暮ったいのかとか、そう言う所は書いて無かったんですよ。

僕の予想としては、食事処の看板娘なので、美人と言う訳ではなく愛嬌が顔に出ているタイプで、表情とか人との接し方が「人好きがする」子なのかなと思います。

「誘蛾灯」の回で、レガがルリを観察して「後15年もすればイイ女になるだろうな」って言ってるので、イイ女に成れる素養はあるんですよ。

レガが思った「イイ女」の基準が、ルリの容姿なのか性格なのか振る舞いや心遣いなのか、って言う所は伏せます。

転じて、僕の書いてる異世界ファンタジーシリーズを読んできてくれた人にはそこはかとなくわかると思うんですけど、グリムは「アベル」の子供の頃とそっくりの容姿をしています。

それは生前にグリムが「自分の姿だ」と思っていた形が影響しているんですね。術師が幼霊としてグリムを固定するときに、意識の中で混乱が起こらないよう、その部分だけは生前の形を残したんです。

その他の大部分は術師の手によって組成の段階から組み替えられており、幼霊グリムと、前作で出て来た「グリム・ノエル」は全く別人と言って良いほど性格も行動パターンも違います。

一時は、生前の意識に飲み込まれかけたグリムですが、その意識に飲み込まれた時も、生前の自分とは違った「冷静な意識を持った」反応を見せています。

グリムがルリに固執するわけは、自分の「統一性」はルリを基準に作られていると言う事が分かっているからです。短く言うと、ルリが意識の明瞭さを保証してくれる心の支えなんですね。

ルリの居る場所が自分の居る場所、ルリと話してる事、ルリを守る事、ルリの望む自分になる事が自分の全部、であると言う事を心得ているのです。

人間としてみたら不思議な子かもしれませんが、彼は精霊ですから。術師の遺志を継いだルリと言う少女に忠実であることは、精霊としての本望なんですよ。