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時々徒然

冷めている恋人同士に等しい母子

母親から、「扱いづらい女だ」なんて言葉が出て来るようになったのは、20歳を過ぎても全く死ぬ様子もなく生きている妹に飽きてきているのだろう。

20歳と言う期限と、「ハラハラドキドキ」と言うときめきが無くなったので、母親は妹に「失恋」をしたのだ。

20年後以後、妹が生き残った時の事を全く想定していなかったが故に。

本来の母親の予定では、20歳での若くしての死と言う壮大なスペクタクル? で、妹の人生は幕を閉じるはずだったのに、今でも妹は半分プータローみたいな状態で生きている。

正確には大手リーズナブルデパートに所属して、色んな売り場の売り子を点々としているらしい。

妹は努力が嫌いなタイプだが、車の免許は取ったと言う。しかし、免許を取ってからしばらくは車に乗らず、母親の送り迎えで職場に通っていた。

それを許す母親も母親だが、「甘える」と言う言葉が、英語で直訳すると「固執する」になる理由が分かった。

妹は、母親に固執しているのだ。もはや、妹の王国の国民は母親だけで、自分に仕えてくれるのも、自分に奉仕してくれるのも、母親しかいない。

一般道で車を運転すると言う緊張と恐怖に晒されるくらいなら、母親の運転で「安全に守られた状態」を維持したいと。彼女もまた、母親に「依存と言う恋」をしているのだろう。

しかし、彼女等の生活は、「ときめきの過ぎ去った恋人同士」と同じなので、打算で続いていると言えなくはない。

妹は、まだ母親が「失恋」したことは気づいていないし、たぶん母親も「妹はやがて死ぬ子だからときめいていた」とは認めないだろう。

ハラハラドキドキしなくなった、だけど生きているから一緒に暮らしている。そして、妹は母親がまだ自分に「ときめいている」と思っている。だから利用するし、母親も強く拒絶できない。

コロナが広まる前、母親と数回会った時、母親が「あの子(妹)、いつか私が死ぬって分かって無いんじゃないかしら」と述べていた。その程度には依存されていることが分かってきたらしい。

どうやら妹は、自分の収入だけで生きると言う人生設計をまるで考えておらず、自分の収入はお小遣いだと思っている節があると。

光熱水費を払うとか、車の維持費を払うとか、税金を払うとか、そう言う「一般人として必要な経費」については、母親の貯金をあてにしているようだ。食費くらいは払うらしいが。

父方の親戚にも、「妹ちゃんが困ったら助けてあげて」とか言われたことがある。父方の親戚にも、妹は「なんにもできないピュアなかわいい赤ちゃん」に見えているようだ。

その、「なんにもできないピュアでかわいい赤ちゃん」である妹は、リアル赤ちゃん(生後3歳)の親戚の女の子をライバル視していた。

何も言わなかったが、妹の考えていることは表情で分かる。俺も、伊達に10年間、あやつの躾を押し付けられていない。

妹の胸中を描写するなら、自分のフレッシュ感は既に失われ、「明るく希望に満ちた小さな子」には叶わない、でも自分には「可愛い」で生きていく以外方法がない、と言った具合か。

今まで考えたことはなかったが、妹の中の自分象と言うのを、彼女の視点に立って考えてみよう。

「泣き叫べばいずれワガママも通る」「みんなから可愛いと言われる」「何かが出来なくても許される」「困難なことは代わりに誰かがやってくれる」と言う事実が過去にあり、

俺がそれは一時の幻想である、人間としてちゃんと根性を持って生きる事と礼節を覚えろと教えていたのだが、その事については俺が実家を不在にした期間で、「チャラ」になったらしい。

妹は「今まで覚えてきたことは、みんな『そうしなきゃならない』ってことじゃないんだ」って思いこみ、本当にDQNになったと。

DQNと言っても、不良になる勇気はない、その必要もない、だって悪い奴(俺)は排除されたから。この家(実家)が、私(妹)の王国! ってなったわけだ。

高校から帰ってくるときタクシーを使っても、じじいが気前よくタクシー代を全額払ってくれるし、家事は全部祖母がやってくれるし、母親は自分に「尽くす恋」をしているし、

兄(妹好き)は大学に通うために家から居なくなったし、俺(躾係)もだいぶ前に進学のため家を出たし、今はこの世の春! この春は永遠! って、プログラミングされたんだろうな。

じじいと祖母の「気前よく孫を養う」って言う姿勢は、いずれ家を継がせるためだと言う目論見を見抜けなかったわけだ。

祖母の晩年、俺が実家に行ったとき、祖母は愚痴をこぼしていた。

「あんなにじいちゃんに懐いてたのに。タクシー代だって毎日払わせてたのに。(妹は)家に入ってすら来ないんだよ。なんて子だろうね」と。

家に入って来ない事より、妹が毎日にタクシーで帰ってきて、しかも、あのケチじじいがタクシー代を払っていた事にビックリした。

生前のじじいは、俺からは金を徴収しようとしてたよなーと言うのをなんとなく思い出す。「収入があるなら、家族に均等に分けるのが筋だ」とかなんとか。

話を聞いたときは意味が解らなかったんだが、じじいが死んでから「金よこせ」って意味だったんだと分かった。

妹の「自己視点」に話を戻そう。毎日タクシーで帰ってくるお嬢様生活が高校時代3年間続いてから、妹は金で専門学校に入った。自分はお姫様だと信じている妹は友達が出来なかった。

同世代をライバル視するどころか見下していたからだ。腕を組んでツンっとすました表情をする、専門学校生時代の妹の顔は「私は誰とも格が違うのよ!」と言う、夢の中に居た。

その期間も母親はときめいていたので、献身的に「尽くす恋」を続けて、金で妹を卒業させた。

そこまで尽くしても妹は死ななかったので、母親は夢から覚めてしまった。

その後、恋の腐れ縁と言うもので、母親は「この子は私が居なくなったら生きて行けるのだろうか」と言う心配をしているわけだ。たぶん適当に生きて行くだろう。